『人生の重要イベントが全部メンテナンス時間に被る』
人生には、いくつか重要なイベントがある。
告白とか、昇進とか、世界を救うとか。。
そして私の人生では、それらがすべてメンテナンス時間に被る。
最初は告白だった。
勇気を出して、LINEを送ろうとした瞬間、
スマホの画面に表示された。
現在、恋愛機能はメンテナンス中です
終了予定:未定
「そんな機能あったっけ?」
再読み込みしても同じだった。
送信ボタンは灰色のまま動かない。
次は仕事だった。
上司に呼ばれて、
「昇進の話がある」と言われた、その直後。
人事システムは現在ご利用いただけません。
重要な処理は後日お願いします。
上司は困った顔で言った。
「まあまた今度で」
その「今度」はまだ来ていない。
決定打は、世界の危機だった。
空が割れ、巨大な何かが降ってきて、
周囲がざわつく中、私は選ばれた。
「君が世界を救うんだ」
私は深呼吸して、スイッチを押そうとした。
ーー押せなかった。
現在世界救済機能は定期メンテナンス中です
ご不便をおかけしております。
「は?」
仲間たちが叫ぶ。
「早くしろ!」
「押してる!押してるけど反応しない!」
説明書を確認した。
※重要
メンテナンス中の操作は
想定外の結果を招く可能性があります。
「押していいのか、これ!?」
迷っている間に
巨大な何かは勝手に去って行った。
世界は救われたのか、
それともただ見逃されたのか、
誰にもわからない。
後日、私は通知を受け取った。
メンテナンスは正常に終了しました
ご協力ありがとうございました。
協力した覚えはない。
それ以来、私は学んだ。
人生の重要な場面では、必ず一度、時計を見る。
そしてこう思う。
「……あ、今は無理な時間帯だな」
私は今日も、
何も起こらない時間に、静かに生きている。
