『魔法少女のマスコットが、未来を知ってるくせに黙ってる』
魔法少女になったその日から、私の横にはマスコットがいる。
白くて、小さくて、語尾に「〜だよ」が付くタイプのやつだ。
「ねえ」
「……」
「未来、見えてるよね?」
マスコットは、ぴくりとも動かない。
ただ、こっちを見ている。知ってる目だ。確実に。
「ねえねえ」
「……」
「その顔、知ってる顔だよね?」
無言。
私は魔法少女だ。
未来が見える能力を持っている。
ただし、嫌な未来しか見えない。
そして毎回、その未来の直前に、
こいつがいる。
「ねえ、あのさ」
私は未来視を使った。
――私が、盛大に転んでいる未来。
――敵は無傷。
――マスコット、横で目を逸らしている。
「お前さ」
「……」
「今、何か言うべきじゃない?」
マスコットは首をかしげた。
分かっててやってる動きだ。
「未来知ってるよね?」
「……」
「黙秘?」
無言。
「じゃあさ、ヒントだけでも」
「……」
「方向性とか」
「……」
「“やめとけ”とかでもいいから」
マスコットは、にこっと笑った。
それだけ。
「それだけ!?」
私は叫んだ。
「笑顔だけ!?未来変える気ある!?」
戦闘が始まった。
嫌な予感しかしない。
「今の動き、まずかった?」
「……」
「回避した方がいい?」
「……」
「避けるね!」
避けた。
敵の攻撃は当たらなかった。
――未来視。
私、別の方向で転んでいる。
「なんで!?」
私はマスコットを睨んだ。
「ねえ、これ全部知ってるよね?」
「……」
「知ってて黙ってるよね?」
マスコットは、両手を広げた。
**『契約上お答えできません』**みたいなポーズだった。
「契約って何!?説明受けてない!」
最終的に、私は開き直った。
「分かった。もういい」
私は未来を見ない。
マスコットも見ない。
「どうせ言わないんでしょ」
「……」
「なら、意地でも変える」
全力で戦った。
転ばない。
無理なポーズを取らない。
写真映えを完全に捨てる。
結果。
世界は救われた。
私は立ったままだった。
未来を見た。
――マスコットが、少し驚いた顔をしている。
「……あ」
初めて、マスコットが声を出した。
「今のは、想定外だよ」
「言えたじゃん!!」
私は叫んだ。
「それ最初から言えたでしょ!!」
マスコットは、気まずそうに目を逸らした。
「……黙ってる方が、面白いかなって」
「誰目線!?」
私はため息をついた。
――どうやらこの世界、
説明役が一番信用できないらしい。
