『魔法少女になって未来が見えるようになったけど、意地でも阻止したい未来しか見えない』

私が魔法少女になった理由は単純だった。

未来が見える能力に惹かれてしまったからである。

もちろんやましい理由ではない…

…決して次の期末テストで楽してやろうとか、これで人生勝ち組…!とか

某なんちゃら日記みたいな話を期待したわけではない。

決して…

なお、現実はそんなロマンを考慮してくれなかった。

最初に見えた未来は、私の顔だった。

あられもない満面の笑みでダブルピースをしている…

「……え?いやなんで???」

場所は分からない。時間も分からない。

誰に何をされていてどういう状況なのかも分からない。

5W1Hを大事にしろという常識はどこに行った。

ただ一つだけ確かなのは、

私が”その顔”で写っているという事実だけだった。

流石にその事実から目を逸らそうと、別の未来を見ようとした。

結果は同じだった。

戦闘中。

作戦会議中

絶体絶命の状況中…

同じ顔だった。

同じ角度。同じダブルピース。

「え?待って?これ固定?」

仲間の子に相談した。

「いいよね~未来見えたら安心よね~」

「いや、明らかにあたしが安心できる未来じゃない…!」

「え~でも笑顔可愛いじゃん!」

「ありがとう…じゃなくて…!明らかにかわいいやつじゃないんだって…!」

「…私はあんな…!あんな顔になりたくない…!」

…ここから私の戦いが始まった。

とにかく…その未来になる可能性を潰しにかかった。

慎重に立ち回った。

無茶はしない。

ポーズは封印した。

それでも未来を見ると

そこには必ず”あの顔”が写った。

「…じゃあこうだ!」

私はあきらめなかった。

突撃はしない。

必死に考えた決め台詞は言わない。

カメラがありそうな場所は避ける。

「…何してんの?」

「リスクヘッジ」

「…それ意味あるの?」

「ある。あたしの意地が」

「…そ、そうなんだ…」

そして最終決戦の日。

私は未来を見た。

ーーやっぱりいた。

満面の笑顔…ダブルピース…

「……うし」

私は深呼吸する。

「絶対この未来だけは阻止してみせる…!」

敵を倒すため…世界を守るため…違う

あの姿で歴史に残らないため…!

わたしは戦った…必死過ぎるくらい必死に…

結果、世界は救われた。

そして…写真には、疲れ果てて片手をあげている私が写っている。

ダブルピースではなかった。

未来は、変えれた。

ただ、その後未来を見ようとしても

何も映らなくなった。

…きっと未来も…私とは関わりたくなくなっちゃったんだと思う。

《おまけ》


『魔法少女になって未来が見えるようになったけど、意地でも阻止したかった未来に、普通に到達する話』

 未来が見えるようになった日、
 私は一つの未来だけを見た。

 私が、満面の笑顔でダブルピースしている未来。

「……ない」

 即座に思った。

 敵も分からない。
 勝敗も分からない。
 ただ、あの顔だけが確定している

「これは阻止案件」

 私は決めた。
 この未来だけは、意地でも回避する。

 未来を変えるため、私は行動を変えた。
 決めポーズを封印。
 写真映えしそうな場所を避ける。
 カメラっぽいものがあれば視線を逸らす。

 仲間に言われた。

「その未来、そんなに嫌?」

「嫌」

「可愛いと思うけど」

可愛いかどうかの問題じゃない

 私は本気だった。

 戦闘中も気をつけた。
 転ばない。
 ジャンプしない。
 両手を同時に上げない。

 未来を見る。

 ――まだいる。
 ダブルピースの私。

「しつこい!」

 私はさらに対策を強化した。

 片手は常に武器。
 もう片手は後ろ。
 ポーズを取る余地を完全に潰す。

 未来を見る。

 ――いる。

「お前、執念深すぎない?」

 最終決戦の日。
 敵は強かった。
 世界の危機だった。

 私は必死で戦った。
 未来なんて見ている余裕はなかった。

 そして――勝った。

 仲間が叫ぶ。

「やったー!!」

 観衆が湧いた。
 空気が一気に緩んだ。

 その瞬間だった。

「よかったあああ!!」

 私は反射的に両手を上げた。

 ピース。
 しかも、ダブル。

「……あ」

 時間が、ゆっくりになった。

 未来視が発動する。

 ――そこに映っていたのは、
 今まさにダブルピースしている私だった。

「これかああああ!!」

 遅い。
 すべてが遅い。

 写真は撮られ、
 記録は残り、
 その瞬間は歴史になった。

 戦いが終わった後、
 私は地面に座り込んだ。

「……結局、こうなるんだ」

 未来は、阻止できなかった。

 でも一つだけ、分かったことがある。

 未来の私は、
 別にふざけてあのポーズをしていたわけじゃない。

 全力で戦って、
 全力で安心して、
 その結果、
 人間として一番油断した瞬間が、
 あの顔だっただけだ。

「……まあ」

 私は立ち上がって、ため息をついた。

「それなら、仕方ないか」

 なお後日、
 その写真は公式記録として永久保存された。

 タイトルは、こうだ。

 『魔法少女、勝利の瞬間』

 私は二度と見返さない。

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