『異世界転生したけど、俺だけチュートリアルがスキップされている。』

目を覚ましたら、草原だった。

青空、風、遠くに城。うん、わかる。これは分かる。異世界だ。

問題はその直後だった。

「では勇者様、ステータスを確認してください。」

目の前に現れた受付嬢みたいなお姉さんが、当然のように言った。

「……ステータスってなんすか?」

……空気が止まった。

「……えっ?」

「え?」

お互いに「え?」といったまま三秒ほど経過した。

「勇者様…チュートリアルは?」

「多分、見ていないです。」

「見ていない……?」

お姉さんは慌てて水晶を操作した。

光る文字が流れ、眉がどんどん下がっていく。

「あ……」

「どうしました?」

「チュートリアル…スキップされてますね…」

「…そんなバナナ」

「”すべて理解済みとして処理”って書いていますね…」

「誰が理解したと…?」

「システムですね…」

「システム強気すぎん?」

…とりあえず剣を渡された。

「装備してください…」

「え?どうやって?」

「……え?」

「……ええ?」

また停止する空気

「勇者様…普通は”装備する”って念じると…」

「念じたことないんですけれど…」

「念じたことない……?」

受付のお姉さんの目がだんだん潤んでいく…

「じゃあ…スキルは…?」

「スキルですか…?」

「魔法は?」

「なんか火とか出せるんですかね?」

「出ません」

「あの……勇者様…」

お姉さんは深呼吸をした。

「これは…これは想定外です」

「俺もです」

そこへ、通りすがりの村人が声をかけてきた。

「おぉ…!勇者様ではありませんか!最初はスライム退治からですな!」

「……スライムってなんすか?」

……次は村人が固まった

「なんといいましょう…ゼリー…?」

「食べ物の話してます?」

「…敵の話です…!」

「え!?敵!?」

遅い。情報処理が遅い。

気づいたら、なんか足元にぷるぷるした青い物体がはねていた。

「これです!これがスライムです!!」

「え!?これどうすればいいんですか!?」

「そんなこと言われても…!」

やはり説明が遅すぎる…

反射的に剣を振ったものの…当たらない。

「これ当たり判定どうなってんの!?」

「勇者様!感覚でなんとか…!」

「感覚でって…!そんな適当な…!」

そしてスライムの体にあたり、俺は転んだ

「痛っ!急になに!?」

「あ、ヒットポイント減りましたね」

「ヒットポイントあるんだ!今知ったんだけど!?」

そうこうしていたら、通りすがりの農家のおじさんがスライムを倒してくれた。

「最近の勇者は大変そうじゃの」

「そういう話なんすかね…?」

受付に戻ると、俯きながらお姉さんが申し訳なさそうに言った。

「一応…ヘルプは……あるそうです…」

「マジすか!?早く言ってくださいよ~もう~」

「ただ…上級者向けだそうです…」

「わたくし初心者なんですけど!?」

俺は空を仰いだ

異世界転生。

選ばれし勇者…のはずだった。

…一つだけ確かな事がある。

ーー俺だけ、チュートリアル無しで異世界ライフが始まった。

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