『未来の自分が、毎回「今の判断はセンスない」って顔をする』
未来が見える能力に目覚めたとき、私はもっと壮大なものを期待していた。
世界の危機とか、運命の分岐点とか、そういうものだと思っていた。
現実は違った。
私の未来視に移るのは、未来の私の顔だけだった。
しかも毎回、同じ表情。
ーー口は結ばれ、
ーー眉が、ほんの少し下がり
ーー目が、完全に「それ選ぶ」っと言っている。
「……それは無いわ~って顔だ」
声には出していない。
でもわかる。
あれは間違いなく、センスない時にする顔だ。
試しに、どうでもよい選択で未来を見てみた。
コンビニで、カフェラテかブラックか…
未来の私…即あの顔。
「え?そこでも?」
じゃあ逆!ブラックで!
未来の私は…悪化したな…
「もしかして選択肢自体の問題…?」
私は真剣になった。
仕事の判断。
連絡の返信。
帰り道のルート。
全部で未来の私は同じ顔をする。
責めるわけでも、
起こるでもなく、
ただ静かに、
「今の判断はセンスないわ」って言いたげな顔。
「理由は?」
未来の私は何も言わない。
言わないが表情は一切変えない。
私は意地になった。
「分かった…じゃあこれは?」
あえての遠回りの選択。
効率を捨てた判断。
誰もほめなさそうな行動。
未来を見る。
ーー同じ顔。
「万能な顔だな!?」
私は頭を抱えた。
「センスある判断ってなに!?」
最終的に私は悟った。
きっと未来の私は、
結果を知っているからこそ、
“途中の判断”が全部ダサく見えているのだ。
完成形だけがただしくて、
それに至る過程は、全部未熟。
「……じゃあさ」
私は未来を見ずに、行動することにした。
考えて、悩んで、
今の自分なりに選ぶ
その夜、久しぶりに未来を見た。
ーー未来の私は、少し困った顔をしていた。
あの「センスない顔」じゃない。
「……あ」
多分今、
未来の私は判断できていない。
私は少しだけ、勝った気がした。
