神経痛と無神経な私
「神経痛で病院行ってきた〜」というメッセージが来たのは、
カップスープに熱湯を注いで、三分間をぼーっと過ごしていたちょうどそのときだった。
私は、三行くらいの返信に十倍くらいの時間をかけるタイプの人間だ。
今回も例に漏れず、まず“神経痛”というワードに小さくビビった。
え、それって、病名? 症状? 重いの? 大丈夫なの?
──などと悶々としているうちに、スープがとっくに冷めていた。
「ちょっと怖い話だな〜」
そう返したのは、真面目になりすぎるのも違う気がしたからだ。
心配はしてる。でも、彼女の文面の軽さに合わせたくなるのが、私の悪い癖でもある。
すると返ってきたのは、「生活リズムとか、環境の問題かも〜」というこれまた軽やかな一言。
“環境”なんて、そんな簡単に変えられるもんじゃないよな……と思いつつ、
「環境ね〜、できるに越したことないけどね〜」と相づちを打つ。
そこから彼女の返事は加速した。
「今頭痛すぎるんだよね〜」
「肋間神経痛にもなってて〜つらすぎて(笑)」
まってまって。
頭痛に肋間神経痛って、もうそれ、全身で悲鳴あげてるやつじゃん。
でも彼女は「つらすぎて(笑)」って言う。
その(笑)ひとつで、たぶん、深刻なことを“ネタ化”している。
私もよくやる。言いにくい話ほど「w」でごまかして送る。
そういうときの笑いって、笑ってるほうがつらい場合だってある。
「マジか〜、まあ本当に無茶だけはしないでね〜」
私が送ったその言葉は、やさしさか、あるいは自己保身か。
いや、どちらも少しずつ入ってる。
“心配してる自分”を伝えたい気持ちと、
“どう返していいか分からない”自分を隠したい気持ち。
それでも彼女は、「ありがと〜」と返してくれた。
いつも通りの、夜職をこなす彼女の時間が、また続いていく。
思えば私は、いつも後から思う。
もっとマシな返しがあったんじゃないか、と。
もっと気の利いた言葉、もっと心に届く言葉。
でもその瞬間、私はたいてい“無神経な私”としてそこにいる。
神経痛の彼女と、無神経な私。
うまくバランスが取れているようで、取れていないようで、
でもどこかで、ちゃんと繋がっている気もしている。
今度会ったら、ちゃんとスープでもごちそうしよう。
そのときには、もう少しだけ、
“気の利いた私”になれていたらいいな、と思う
