「つらすぎて(笑)」

「神経痛で病院行ってきた〜」
 LINEの通知が鳴ったのは、ちょうど私が冷凍パスタをチンしているタイミングだった。
 スマホの画面を見ながら、ふと「ちょっと怖い話だな」と思ってしまった。
 “神経痛”という単語の響きが、じわっと背中にくる。

 だから、そう返した。「ちょっと怖い話だな〜」って。
 冗談半分、本音半分。でも、真面目すぎる返事よりは、今の彼女に合ってると思った。

 「生活リズムとか、環境の問題かも〜」
 彼女は、まるで家具の配置を見直すようなノリで言ってきた。
 それに「環境ね〜、できるに越したことないけどね〜」と返したら、少し間を置いてこう来た。
 「今、頭痛すぎるんだよね〜 肋間神経痛にもなってて〜 つらすぎて(笑)」

 ……いや、それ絶対しんどいやつ。

 笑ってる場合じゃないでしょ、と内心思いつつも、
 その「(笑)」が逆に痛々しく見えてしまって、私は少し考え込んだ。

 彼女は今、夜の仕事をしている。生活リズムも、人間関係も、何もかもが昼とは違う世界にいる。
 “普通”って言葉を当てはめることすら失礼な気がして、私はいつも返事に悩む。
 でも、だからって何も言わないのはもっとよくない。

 私は、スマホを握り直して、ゆっくりと打ち込んだ。

 「マジか〜……まあ、本当に無茶だけはしないでね」

 優しすぎず、冷たすぎず、でもちゃんと届いてほしい言葉。
 それが今の私の、せいいっぱいだった。

 彼女の返事はまだない。でも、たぶん今も何かしら忙しくしているんだと思う。
 ベッドの上でスマホ握りしめてるか、あるいは、仕事場のトイレでひと息ついてるかもしれない。

 LINEの文字は軽い。でも、その奥には、体の痛みや孤独や、たぶん小さな不安がある。
 私はその全部を受け止められるわけじゃない。だけど、少しでも「気にしてるよ」ってことだけは伝えたいと思う。

 ──「つらすぎて(笑)」

 その(笑)に隠れたほんとうのつらさが、どうか少しでも和らぎますように。
 願うように、私はスマホを伏せた。

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