第二十六話『中央が揺れる夜』

夜。

きっかけは小さくない。

「たつくんさ」

声が静かすぎた。

それだけで嫌な予感がする。

「最近、わたしのことどう思ってる?」

「どうって」

「正直に言って」

エルちゃんはど真ん中。

でも動かない。

俺は答えに詰まる。

「別に変わらない」

「変わらないってなに」

声が少し強くなる。

「距離あるよ」

「ない」

「ある」

沈黙。

まるさんが続ける。

「わたしがしんどいって言うと、たつくん固まる」

「……」

「正解探してる顔してる」

図星。

俺は視線を外す。

「間違えたくないだけ」

「それ、向き合ってない」

刺さる。

俺は反射的に言い返す。

「じゃあどうしろって」

「感情で返してよ」

「それで悪化したら?」

「悪化前提で話してるの?」

空気が変わる。

エルちゃんが耳を伏せる。

俺は少し声が荒くなる。

「俺だって怖いんだよ」

まるさんが止まる。

「なにが」

「いなくなるのが」

静かになる。

俺は続ける。

「だから変なこと言えない」

「だから距離置くの?」

「置いてない」

「置いてる」

エルちゃんがゆっくり降りてくる。

俺とまるさんの間。

でも噛まない。

ただ座る。

まるさんがぽつり。

「たつくんさ」

「うん」

「わたしを壊れ物みたいに扱う」

それは予想外だった。

俺は言葉を失う。

「そんなつもりじゃ」

「でもそう感じる」

沈黙。

重い。

軽口も出ない。

俺は小さく言う。

「守りたいだけ」

「守られたいんじゃない」

まるさんの目が少し赤い。

「隣にいてほしい」

それだけ。

シンプルなのに難しい。

エルちゃんが俺の手を軽くカプ。

痛くない。

警告じゃない。

ただ、触れた。

俺は息を吐く。

「……ごめん」

今度は言い訳じゃない。

「怖いのは俺の問題だ」

まるさんはすぐに許さない。

少し時間がかかる。

でも視線は外さない。

「わたしも」

「うん」

「全部言えてない」

エルちゃんがど真ん中に戻る。

少しだけ、

空気が緩む。

完全解決じゃない。

でも壊れていない。

俺は言う。

「正解探すのやめる」

「ほんとに?」

「できるだけ」

まるさんが小さく笑う。

「できるだけ、ね」

エルちゃんが最後に俺をカプ。

「痛い」

「“ちゃんとやれ”だな」

夜は静か。

中央はまだある。

でも、

少し揺れた。

それでも、

戻ってきた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です