第二十四話『エルの由来』
夜。
まるさんが突然言った。
「ねぇ、たつくん」
「なに」
「エルちゃんの名前の由来、ちゃんと覚えてる?」
俺はベッドど真ん中を見る。
エルちゃん、毛づくろ中(なお毛はそんなに生えていない)
「天使だろ」
「そう」
まるさん、少し笑う。
「ミカエルとかラファエルとか、エルって”神”って意味あるんだよ」
「急に神学」
「かっこよくない?」
エルちゃん、こっち見る。
「にゃ」
「聞いてる」
俺は肩をすくめる。
「でも当時はさ」
「うん」
「子猫で、全然神っぽくなかったよな」
まるさん、吹き出す。
「震えてたもんね」
エルちゃん、ぴく。
俺をカプ。
「痛っ」
「”言うな”だな」
まるさん、ベッドに座る。
「でもさ」
「なに」
なんか守ってくれそうな名前にしたかったんだよね」
少し静か。
エルちゃんは喉を鳴らす。
「天使に守られたいのか」
「違うよ」
まるさん、軽く俺を小突く。
「守るの」
エルちゃんが間に入る。
ど真ん中。
「にゃ」
「中央政権は守らないらしい」
まるさん、笑いながら続ける。
「でも結果さ」
「うん」
「めっちゃくちゃ噛む天使になった」
エルちゃん、即カプ。
「痛い!」
「”訂正しろ”だな」
俺はエルちゃんを見る。
「でもまあ」
少しだけ真面目に言う。
「いなくなったら困るよな」
一瞬、空気が止まる。
まるさん、すぐに軽く返す。
「いなくならないよ」
エルちゃん、俺の足をカプ。
「痛い」
「”当然だ”だな」
まるさんが言う。
「エルってさ」
「うん」
「なんか真ん中にある感じしない?」
「中央政権だから?」
「そう」
エルちゃん、ど真ん中に座りなおす。
完璧な位置。
俺は笑う。
「天使っていうか」
「なに」
「王様だろ」
エルちゃん、喉を鳴らす。
承認。
まるさんがぽつり。
「でもさ」
「うん」
「ちゃんと守ってくれてると思うよ」
エルちゃんは何も言わない。
ただ、
ど真ん中で動かない。
それだけで、
部屋は少し安定する。
「ミカエルとかラファエルとかさ」
まるさんが続ける。
「エルって最後につくでしょ」
「うん」
「だから最後に残るのがエルなんだよ」
俺は笑う。
「語呂合わせすぎ」
エルちゃん、俺をカプ。
「痛い!」
「”悪くない”だな」
夜は静か。
天使かどうかは分からない。
でも、
ど真ん中にいる名前は、
ちゃんと似合っている。
