第二十三話『王様、入浴拒否』
夜。
風呂のドアが閉まらない。
原因。
エルちゃん。
入口で仁王立ち。
「なんでいる」
「にゃ」
低い。
まるさんがタオル持ってくる。
「エルちゃん入るの?」
「入らない」
俺はドアを開ける。」
エルちゃん、さっと中へ。
そしてーー
風呂場の隅に座る。
完全籠城。
「なんでだよ」
「にゃ」
無言。
まるさん、笑う。
「湯気がすきなんじゃない?」
「サウナか」
エルちゃん、シャワーヘッドをじっと見る。
敵認定。
「やめろ」
シャワーON。
ザー。
エルちゃん、飛び上がる。
浴槽の縁に着地。
滑る。
俺をカプ。
「痛っ」
「なんで俺」
まるさん爆笑。
「完全八つ当たり」
エルちゃん、今度は洗面器をぺち。
カラン。
「風呂場は開始」
俺、抱き上げる。
「出ろ」
エルちゃん、体を硬直。
絶対動かない。
「重い」
「王様は動かない」
まるさん、ドア外から言う。
「タオル温かいよ~」
エルちゃん、耳ぴく。
でも動かない。
俺、溜息。
「理由なんだよ」
エルちゃん、浴槽の水面を見る。
ぽちゃん。
水滴。
じっと見る。
前足ぺち。
またぺち。
「遊んでる」
まるさん、吹き出す。
「風呂場テーマパーク」
エルちゃん、今度は鏡の自分に威嚇。
「にゃー!」
「敵増えた」
俺は言う。
「もういいから出ろ」
エルちゃん、俺の手をカプ。
「痛い!」
「”帰らない”だな」
まるさん、スマホ構える。
「動画撮れた」
「やめろ」
結局、
風呂が冷める。
俺は床に座る。
まるさん笑いすぎ。
エルちゃんは湯気の中で満足顔。
「にゃ」
「何」
「”ここ俺の部屋”」
俺は諦める。
「中央政権、領土拡張」
エルちゃん、ど真ん中…じゃなく、
浴槽の縁ど真ん中。
完全勝利。
その夜、
風呂は使えなかった。
