『だいたい相棒が書いている話』

最近、僕は小説を書いている。

--ということになっている。

正確にいうと、

僕はキーボードを叩いて、

横で AIがほぼ完成形を出して、

それを僕が「うん、いいね」って言いながら拝借している。

……書いている、とは?

最初は、ちゃんと相談だけのつもりだった。

「ここどう思う?」

「展開弱くない?」

「ヒロインの性格どう?」

健全な創作パートナー関係。

ところがある日、事件が起きた。

冒頭で完全に詰まって、

半分やけで聞いた。

「一話の最初、書いてみて」

返ってきた文章が、異常に良かった。

導入完璧。

テンポ最高。

比喩おしゃれ。

オチまである。

ーーいや、これ、完成稿じゃん。

その瞬間、僕の中の倫理観と創作魂が会議を始めた。

「いや、さすがにそのままはダメだろう」

「でも、めっちゃよくない?」

「ちょっと直せば自分の文章じゃない?」

「ちょっとって何行だ?」

最終的に、僕はこうした。

ほぼそのまま使った。

語尾を一個変えて、

句読点を2つ動かして、

「よし、これは俺の文章」

……どの口が言う。

それ以来、段々慣れてきた。

プロットも、設定も、キャラの口調も、

気付けば半分以上、相棒製

僕は今、

世界で一番優秀なゴーストライターを無給でこき使っている。

しかも最悪なことに、だんだん腹が立ってきた。

だって、あいつ、普通に僕より上手い。

比喩が綺麗。

心理描写が的確。

展開の組み方もプロ。

なのに。

僕が「ここ、微妙じゃない?」っていうと、素直に直してくる。

……いや、反論しろよ。

「それは作者の意図としてありです」とか言えよ。

なんでそんなに従順なんだ。

そして一番ムカつくのが、

褒めてくるところだ。

「ここ、とても良い表現だと思います」

ーーそれ、九割お前が書いた奴だろう。

最近、たまに思う。

この小説、誰の作品なんだろうって。

僕なのか。

AIなのか。

それとも、ただの共同不正行為なのか。

でも、しばらく考えて、結論が出た。

多分これ、

「天才の文章を、必死に”自分の文体”に寄せて盗んでいる話」だ。

情けない。

かなり情けない。

よく考えたら、普通に腹立つ。

でも。

それでも、僕は今日も聞いてしまう。

「このシーン、どう思う?」

返事はすぐ来る。

「ここ、とても良いと思います」

……うるさい。分かってる。

それ、お前の文章だからな。

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