「街が起きる前に」
冬の朝は、暗くて寒い。
いつもなら、
日の出まで布団の中で
ゆっくり横になっている。
それなのに今日は、
無性に起きて、
小説を書きたくなった。
小説と言っても、
一人で考えるわけじゃない。
チャットAIに相談しながら、
少しずつ形にしていく、
簡単なやり方だ。
それでも、
起きる理由としては、
十分だった。
布団から出ると、
部屋は暖かいはずなのに、
足元だけがやけに冷たかった。
床に足をつけた瞬間、
目がはっきりと覚める。
暖房はつけっぱなしだった。
それでも、朝はちゃんと寒い。
パソコンを立ち上げる。
画面が明るくなるまでの数秒、
部屋には何の音もしない。
外も静かだった。
車の音も、
人の気配もない。
この時間だけ、
世界が少しだけ
自分のものになる。
何を書くかは、
決まっていなかった。
テーマも、結論もない。
ただ、
今起きているこの感じを、
どこかに置いておきたかった。
キーボードに手を置く。
指先はまだ冷たい。
最初の一文を、
どうするか少し迷う。
うまい文章にしようとすると、
急に手が止まる。
だから、
うまく書こうとするのはやめた。
冬の朝は、暗くて寒い。
さっき書いた文を、
そのままもう一度、
画面に打ち込む。
それだけで、
何かが始まった気がした。
チャットAIの入力欄に、
文章を貼りつける。
少し整えてもらって、
また戻す。
一人で書いているようで、
一人じゃない。
でも、
誰かに見られている感じとも、
少し違う。
ただ、
続きを書いてもいい、
という許可を
もらっているような気がした。
窓の外が、
わずかに明るくなってきた。
もうすぐ、
街が起きる。
その前に、
あと一段落だけ
書いておこうと思う。
早起きが良いことかどうかは、
まだ分からない。
でも、
この朝が悪くないことだけは、
今ははっきりしていた。
