「友達判定」
彼女との関係は、ずっと「友達(安定)」だった。
三年変わらない。
一度も揺れたことがない。
それが、少しだけ気になり始めたのは、
他の関係が、次々と更新されていくのを見たからだ。
職場の同僚は、いつの間にか「恋人」になっていたし、
学生時代の友人は、「切断推奨」に変わっていた。
昨日まで一緒に飲んでいた相手が、
今日はもう「知人」になっていることもあった。
彼女との表示だけが、
時間の流れから取り残されたみたいに、そこにあった。
彼女とは、よく話す。
仕事の愚痴も、家族のことも、
言葉にしづらい不安も。
「これ、友達に話す内容かな」
そう言って、彼女は少し笑う。
その言い方まで、三年前と変わらない。
画面を確認する。
やっぱり、「友達(安定)」のままだ。
安心しているはずなのに、
胸のどこかが、ほんの少しだけ落ち着かない。
判定は、申請すれば更新できる。
関係を再評価してもらうだけだ。
変わるかもしれないし、
変わらないかもしれない。
最悪の場合、終わることもある。
「一回、申請してみる?」
彼女は、軽い調子で言った。
天気の話でもするみたいに。
僕は、スマホを伏せた。
変わらないことが、
怖くなったのは、いつからだろう。
更新されていない関係は、
努力していない証拠なのか。
踏み出さない臆病さなのか。
それとも、
ただ、ここに置いておきたいものなのか。
申請しなかった関係は、
そのまま残る。
安定したまま。
名前も、距離も、変わらずに。
彼女はまた、
「じゃあね」と言って手を振る。
僕はそれを見て、
画面を閉じた。
たぶん、
変わらないという選択も、
ひとつの判定なのだと思う。
