📘 《15分版》論理学で読み解く日常のすれ違い(整備済み台本)
🎤 0. オープニング(約1分)
皆さん、「論理的思考」という言葉はよく耳にすると思います。
でも実は、日常で使う“論理的” と、数学やコンピュータで使う “論理” には少しズレがあります。
今日はこのズレを、太郎君・次郎君の3つのエピソードを通して体験しながら、
論理学とは何をしている学問なのか をシンプルに紹介します。
① “否定”のズレ:高くて不味い→?(約4分)
まず1つ目の例です。
太郎君と次郎君は外食に行きました。
太郎君:「何食べる?好きなの選んでいいよ」
次郎君:「高くて不味くなければなんでもいいよ〜!」
ここで太郎君が困惑します。
太郎君:
「高くて“不味くない”って……
“高くて美味しいもの”限定ってこと?」
次郎君は返答に困ってしまいました。
■ どこにズレがあったのか?
次郎君は
「高くて不味い」→(否定)→「高くない or 不味くない」
と言いたかった。
しかし日常会話で
「高くて不味くない」
と言うと、この「て」がANDのように働きます。
つまり
“高い AND 美味しい”
と解釈されてしまったわけです。
■ 学びのポイント
論理学では否定はこう動きます:
- NOT(A かつ B)は
→(NOT A)または(NOT B)
日常の否定の感覚とズレるため、こうしたすれ違いが起きます。
② “または”のズレ:太郎くんの事件(約4分)
次の例。
店員さんが太郎くんにこう聞きます。
「コーヒーまたは紅茶、どちらにしますか?」
太郎くんの返事は――
「両方ください。」
店員さんはビックリしますが、太郎くんは論理学的には正しいのです。
■ 論理学の「または(OR)」はこう
- 「または」= 少なくとも一方
- 両方OK
- どちらか一方に限定しない
一方、日常会話の「または」は
“どちらか一方”
で使われることが多い。
■ プログラミングでもよくある混乱
OR が「どちらか一方」を意味しないため、
初心者が「なんで両方で真になるの?」となる理由はこのズレです。
③ “ならば”のズレ:次郎くんの祝日宣言(約5分)
最後の例です。
次郎くんが言いました。
「僕が総理大臣になったならば、今日は祝日です。」
これ、論理学では**“真”**と判断されます。
■ なぜか?
論理の「ならば(→)」は、非常に単純なルールです。
p → q が“偽”になる唯一のパターン:
- p が真
- q が偽
このときだけ“偽”。
それ以外はすべて「真」と扱います。
次郎くんの例では:
- 次郎くんは総理ではない(p が偽)
→ p が偽の時点で p→q は無条件に真
祝日であろうとなかろうと関係ありません。
これが日常の「因果の含んだ“ならば”」との大きな違いです。
■ この“奇妙さ”を使うとできる推論
次郎くんの発言を整理すると:
- p → q(もし総理なら祝日)
- ¬q(今日は祝日ではない)
この2つが成り立つなら、
矛盾を避けるためには ¬p(総理ではない) が必ず導かれます。
これが論理学の強みで、
「真偽そのものを保証する」 のではなく、
「矛盾があるかどうかを判定する」 のです。
④ 締め(約1分)
今日の3つのズレ:
- 否定は直感通りに動かない
- またはは“両方含む”
- ならばは因果関係とは無関係
この3つを理解すると、
数学の証明、プログラミングの条件式、契約書や規約の読み方が一気にクリアになります。
論理学は難しい学問ではなく、
思考のエラーを減らすための“構造の技術”
と捉えてもらえると嬉しいです。
