第二十話『義理か本命か中央政権』
夜。
テーブルの上に小さな箱。
「なにそれ」
俺は聞く。
まるさん、ちょっと得意げ。
「バレンタイン」
「早くない?」
「今日だよ」
エルちゃんはベッドど真ん中。
でも視線は箱。
「にゃ」
「嗅覚反応早いな」
まるさん、箱を差し出す。
「どうぞ」
「これ」
「うん」
「義理?」
沈黙。
エルちゃんがぴく。
「聞くな」
「気になるだろ」
まるさん、にやにや。
「どっちだと思う?」
エルちゃんが俺の足をカプ。
「痛い」
「“地雷踏むな”だな」
俺は箱を受け取る。
軽い。
開ける。
チョコ。
ちゃんとしてるやつ。
「……」
「なにその間」
「高くない?」
「そこ?」
エルちゃん、テーブルにジャンプ。
箱をのぞき込む。
「にゃー」
「王様も気になるらしい」
俺は一個持ち上げる。
「これさ」
「うん」
「義理ならコスパ悪くない?」
「やめて」
エルちゃん、前足ぺち。
チョコ危機。
「触るな」
カプ。
「なんで俺」
まるさんが言う。
「で、感想は」
一口食べる。
うまい。
「うまい」
「それだけ?」
「うまい」
エルちゃん、じっと見る。
「にゃ」
「“もっと言え”だな」
俺は少し考える。
「……ありがとう」
まるさん、一瞬だけ静か。
「どういたしまして」
エルちゃんが俺の指をカプ。
「痛い」
「“余韻壊すな”だな」
俺はチョコをもう一つ取る。
「これさ」
「うん」
「俺からもある」
「え?」
冷蔵庫を開ける。
プリン。
「は?」
「バレンタイン返し」
「違うイベント!」
エルちゃん、冷蔵庫前に座る。
「にゃー!」
「王様分も?」
「ない」
カプ。
「痛い」
まるさん、笑い止まらない。
「バレンタインにプリンて」
「甘いものだから同じ」
「雑」
エルちゃん、ど真ん中へ戻る。
喉鳴らし。
王様は関係ない顔。
まるさんがぽつり。
「で、義理だと思う?」
俺はチョコをもう一口。
「中央政権案件」
「逃げた」
エルちゃん、最後に俺をカプ。
「だからなんで俺」
夜は静か。
チョコはうまい。
答えは出ない。
でも、
ど真ん中は今日も埋まっている。
