『正解をください』
夜0:17。
俺はスマホを握りしめている。
画面には彼女からのメッセージ。
「今日もしんどい」
俺はチャットAIを開く。
どう返せばいいですか?
送信。
数秒で返ってくる。
“共感を大切にしましょう”
知ってる。
それは知ってる。
でもどう書けばいい。
俺はまた打つ。
生きてくれって言っちゃいました。重いですか?
数秒。
“あなたの気持ちは自然です”
自然かどうかじゃない。
重いかどうかが知りたい。
俺は布団に転がる。
天井を見る。
またスマホを見る。
またAIを開く。
今既読だけです。やばいですか?
“既読=ネガティブとは限りません”
それも知ってる。
でも落ち着かない。
俺は文章を打つ。
「無理しないでね」
消す。
弱い気がする。
「俺はいるよ」
消す。
重い気がする。
「今日もお疲れ」
味気ない。
俺は再びAIに聞く。
彼女がしんどい時、俺は何者ですか?
返答は早い。
“あなたは横に立つ人です”
横に立つ。
救う人じゃない。
責任者じゃない。
横。
俺はその単語を眺める。
横。
スマホが光る。
彼女から返信。
「ありがと」
それだけ。
短い。
でも、切れていない。
俺はAIを開く。
ありがとうって来ました。これはどういう意味ですか?
“そのままの意味の可能性が高いです”
俺は笑う。
なんだそれ。
でもちょっと肩の力が抜ける。
夜0:43。
俺は布団の中でつぶやく。
「正解なんてないのかもな」
AIは何も言わない。
当然だ。
俺はスマホを置く。
今日も必死だった。
彼女を守ろうとして、
正解を探して、
自分も揺れて。
ちょっと滑稽かもしれない。
でも本気だ。
翌朝。
俺はまたAIを開く。
でもやっぱり不安です。
数秒後。
“それはあなたが大事に思っている証拠です”
俺はスマホを閉じる。
たぶん今日も揺れる。
でも逃げない。
救うためじゃない。
横に立つため。
それでいい。
