第十一話『酔っ払いエンジニア』
夜。
珍しく、俺が飲んで帰ってきた。
「ただいまー」
声が若干でかい。
まるがソファから顔を上げる。
「おかえり。酔ってる?」
「酔ってない」
エルちゃん、ベッドど真ん中からじっと見る。
「顔赤いよ」
「赤くない」
靴を脱ぎ損ねて壁にぶつかる。
「壁が動いた」
「動いてない」
エルちゃん、ゆっくり近づく。
くんくん。
そしてカプ。
「いっ」
「“酒くさい”だな」
俺、床に座る。
「まるさーん」
「なに」
「聞いて」
「もう嫌な予感」
俺は真顔で言う。
「俺、ちゃんとやってる?」
まる、吹き出す。
「急にどうしたの」
「今日さー」
指を振る。
「上司がさー」
エルちゃんが指をカプ。
「痛い」
「ジェスチャー多い」
「話聞いてよまるさん」
まる、腕組み。
「聞いてるよ」
俺、近づく。
距離がちょっと近い。
「俺さー」
「うん」
「めっちゃ頑張ってるよね?」
エルちゃん、間に入る。
ど真ん中。
「邪魔」
カプ。
「なんで俺」
まる、笑う。
「頑張ってるよ」
「ほんと?」
「うん」
「ほんとに?」
「めんどくさい」
俺、床にごろん。
「まるさんさー」
「なに」
「俺のことどう思ってる?」
沈黙。
エルちゃんが俺の頬に前足。
「重い」
まる、天井を見る。
「酔うと質問増えるよね」
「ちゃんと答えて」
エルちゃん、俺の耳をカプ。
「いったぁ!」
「“やめろ”だな」
俺、エルちゃんを見る。
「王様さー」
「にゃ」
「俺ちゃんとやってる?」
エルちゃん、じっと見て、
カプ。
「痛い!」
まる、笑い崩れる。
「王様判定は“黙れ”」
俺、まるのほうを見る。
「ねぇ」
「なに」
「俺、迎えに行ってるよね?」
「行ってるね」
「えらくない?」
「えらい」
少し静か。
俺、小さく言う。
「そっか」
エルちゃんが胸の上に乗る。
重い。
「圧」
カプ。
「だからなんで」
まる、ちょっと優しい声。
「酔うと素直だね」
「素直じゃない」
「素直」
エルちゃん、喉鳴らす。
俺は目を閉じる。
「まるさん」
「なに」
「ここ、なくならないよね」
一瞬だけ静か。
でも重くしない。
まる、軽く言う。
「王様いるから大丈夫」
エルちゃんが俺の顎をカプ。
「痛い」
「承認完了だな」
まる、笑う。
「酔うとかわいいね」
「かわいくない」
エルちゃん、最後にもう一回カプ。
「だからなんで俺」
夜は静か。
酔っ払いエンジニアは床で寝る。
ベッドど真ん中は王様。
安定。
