第九話『エルちゃんダイエット宣言(未遂)』
「太ったよね」
まるが突然言った。
ベッドど真ん中で伸びているエルちゃんを見る。
エルちゃん、ぴくっと耳。
「言うな」
「言ってないよたつくん」
「空気で言った」
エルちゃん、ゆっくり起き上がる。
むちっとしたお腹。
「ちょっとだけ丸いかも」
「スフィンクスってこんなだろ」
まる、真剣に調べ始める。
「適正体重…あ、ちょっとオーバーしてる」
エルちゃん「にゃー!」
「抗議きた」
「図星」
エルちゃん、まるのスマホに前足。
画面閉じる。
「調査妨害」
「王様は数字を見ない主義」
まる、腕組み。
「ダイエットしよっか」
静寂。
エルちゃん、ゆっくり俺を見る。
嫌な予感。
カプ。
「なんで俺」
「“止めろ”だな」
「俺に言うな」
まる、キッチンへ。
「今日からおやつ減らす」
エルちゃん、瞬間移動。
フード棚の前に立つ。
無言。
圧。
「にゃー」
低め。
「威圧鳴き」
「強い」
まる、心揺らぐ。
「でも健康のためだし…」
エルちゃん、まるの足にしがみつく。
そしてカプ。
「いった!」
「情に訴えてきた」
俺、冷静に言う。
「運動増やせば?」
二人同時にこっちを見る。
「どうやって」
「走らせるとか」
エルちゃん、即カプ。
「痛っ」
「“自分が走れ”だな」
まる、笑う。
「エルちゃん運動嫌いだもんね」
「ニャルソックはするけど」
「警備はカロリー消費少ない」
エルちゃん、窓際へ移動。
仁王立ち。
「にゃ」
「話は終わりらしい」
まる、しゃがむ。
「じゃあさ」
「うん」
「スプラのとき、追いかけっこしよ」
エルちゃん、無言。
「レーザーポインター?」
即カプ。
「それはダメ」
「猫的倫理に反するらしい」
まる、しばらく考える。
そしてぽつり。
「……まあいっか」
「早い」
「かわいいし」
エルちゃん、ど真ん中へ戻る。
勝利の構え。
「にゃ」
「完全勝訴」
まる、ベッドに倒れる。
「エルちゃんが健康ならそれでいいや」
俺も隣に座る。
「健康かどうかは怪しいけどな」
カプ。
「だからなんで俺」
「“余計なこと言うな”だな」
まる、笑う。
「ねぇ」
「なに」
「太ってても真ん中だよね」
「中央政権は不変」
エルちゃん、喉を鳴らす。
丸い。
でも王。
結局、
ダイエットは始まらない。
夜は平和。
ベッドのど真ん中は、
今日も安定している。
